介護福祉士の資格と適正
介護福祉士は、社会福祉士と共に1987年に生まれた国家資格である。その背景には「寝たきりや痴呆の面倒は家族でみればいい」という発想の限界があり、介護の社会化という政治的課題があった。そこで高齢者や障害者をケアし、生活全般のサポートを行なっていく「介護プロ」の大量育成手段として、この資格が作られた。
資格ができてからたくさんの養成施設、専門学校が設立され、若い介護士が次々と誕生した。介護保険制度の導入で、その勢いはさらに加速した。また、一般企業の就職難や不況によるリストラの影響もあって、この資格を武器に介護職に転身を図る人たちもかなり増えた。
ただし、単純に介護職なら仕事の口が豊富にあるだろう、という程度の考えで志望するのであれば「甘い」と言わざるを得ない。仕事の中身そのものに向き不向きがはっきりとあるからである。事実、不況で仕事を無くした多種多様な人材が介護職に流れ込み、全体的に質が低下しているという厳しい指摘もあるのだ。
介護福祉士の就職先として最も有力なのは、特別養護老人ホームである。ここでの仕事は、基本的に食事、排泄、入浴の介助の繰り返しである。頭では分かっていても、下の世話に慣れることができず、挫折する介護士も少なくない。また、入浴をはじめとする身体的介助は肉体労働そのものであり、それが辛くて辞めるという介護士もいる。
ちなみに、介護福祉士になるには養成施設を卒業する以外にも、3年間の介護実務経験を経て国家資格を受験する方法がある。そのため、実際に現場で働いてみて、『介護福祉士になろう!』という決意ができてから資格を取得しても遅くはないだろう。